実際の記事はこちらからご覧いただけます。
大型チャックに特化 ものづくりを支える「掴む」技術
高速回転する金属をしっかり掴んで固定する
切削加工型の工作機械の周辺機器を設計・製造しています。工作機械とは、マザーマシンとも呼ばれるもので、いわば「機械を作るための機械」です。その周辺機器の一つである「チャック」という部品が、当社の売上げの80%を占めています。
工作機械には、加工したい金属の材料に高速回転する刃物を押し当てて削っていくものがあります。逆に、材料の方を高速回転させ、刃物を当てて削るタイプのものもあります。これらの機械において、金属材料を“掴んで固定する”機器がチャックです。
チャックの大きさや形は様々ですが、中でも当社が手掛けているのは、直径60㎝~2mの大型チャック。掴む材料の重さは100tにのぼるものもあります。
ガスタービンや風力発電設備、石油を掘るドリルやパイプ、大型の建設機械、航空機、鉄道車両などの部品です。今挙げたようなものは非常に精密に作らなければならないので、それを掴むチャックにも精密さが求められます。また、加工時は大きくて重い材料が高速回転するわけですから、しっかり固定されていないと大事故につながります。よって、チャックには掴むときの保持力も大切です。
柔軟な対応で大型チャックのニーズに応える
1933年です。当初は小型チャックを作っていましたが、競合が多く苦戦を強いられたため、1965年から大型チャックに照準を合わせるようになりました。大型は量産できず、毎度注文に合わせて一から作らなくてはならないため、他社からは敬遠されがちだったのです。加工する材料は多種多様ですし、最近は工作機械の複雑化が進んでいるので、チャックも個別の仕様に合わせた特別設計で作ることが増えてきています。お客様の工場にある昔からのチャックが劣化したため、同じものを作ってほしいと依頼されることもあります。こうしたお客様個別のニーズに柔軟に対応することで、当社は信頼を得ていくことができました。
当社の大型チャックは国内の工作機械メーカーだけでなく、海外の商社からも評価いただくようになり、1979年にアメリカへの輸出が始まりました。現在では国内唯一の、そして世界でも数少ない大型チャック専業メーカーとして、海外の取引先はアジア、オセアニア、ヨーロッパにも広がっています。
工作機械メーカーさんとの関係を築くことができたおかげで、チャック以外の工作機械周辺機器も手掛けるようになりました。加工対象の材料を載せるパレットを自動で交換する「パレットチェンジャ」です。1980年代にお客様から依頼されて製造を開始し、一時期は売上げの約半分に迫るほど拡大したこともありました。現在も売上げの10%ほどの規模で作り続けています。
2000年代頃から風力発電が増え、また中国経済の成長に伴い建設機械が伸びたことで、大型チャックを使う工作機械も増えていきました。続いて原子力発電、石油掘削、半導体製造装置、最近では航空機の製造、AIデータセンターの電力需要による発電関係の機械など。こうした設備等の伸びにより、それを作るための工作機械とともに大型チャックの需要も伸びています。
世の中のトレンドの変化によって需要は変化しますが、大きな金属材料というのはなくなりません。日本製の工作機械は海外でもよく使われているので、大型チャックのさらなる海外販路拡大にもチャンスはあると考えています。
新たな技術開発への挑戦
時代とともに工作機械は多機能化・複雑化が進み、いろいろな装置が付け加わっていっています。その分、チャックの装着部に割けるスペースが小さくなっているので、「チャックを薄く、軽くしてほしい」という要望が出てきました。これを受け、10年前に剛性を保ちつつ薄型・軽量を実現したチャックを開発したところ評判が良く、当社の柱になっています。また、最近は工作機械の安全面に対する規制が厳しくなっているので、チャックもそれに対応したものが求められています。
当社は新技術の開発に積極的に取り組んでおり、過去には大学との共同研究開発にも挑戦しました。結果的には商品化まで至りませんでしたが、多くのことを学ぶことができ、当社全体の技術レベルも大きく向上しました。技術開発は、今後も継続していかなくてはと思います。
社会の変化に対応しながらチャレンジを続ける
工作機械のエンドユーザーさんとなる工場は、どこも人手不足に直面しています。そこで、チャックが材料を掴む工程を自動化する取組を進めています。
手動・自動のどちらのタイプもあります。チャックは複数のツメで材料を掴んで固定します。材料の形が円筒形なら、ツメに自動で掴ませるのも簡単なのですが、歪んだ円形や異形の場合が難しいのです。材料が削りやすい位置に固定されるよう、ツメの位置を一つひとつ調整しなければいけませんからね。従来は現場のユーザーさんが手作業で行う必要があり、かなり手間がかかっていました。これが自動化できれば、ユーザーさんにとってより使いやすいものになるはず。こうしたニーズを察知し、工作機械メーカーさんに提案できるように動くことが、現在の課題です。
社会の変化によって、なかなか若手人材を採用することが難しくなってきており、またベテランの戦力にも限りがあります。そのため、留学生や高度外国人材の理系の方の採用にチャレンジしています。さらに、数年前から最新の情報技術や新しいツールをうまく活用して、各種作業を簡単にしていかなければと思うようになりました。人手不足の解決という課題を解決するには、それしか方法はない、と。
ただ、ベテランにとっては新しいツールの使い方を習得するよりも、これまでのやり方で作業する方がスピーディかつ確かな仕事ができます。そのため、ベテランは新しいやり方の導入を嫌がるものです。よって新しいツールは、まず若手に学んでもらい、実際に仕事で結果が出せるということを示してから、ベテランにも徐々に浸透させていく、という手法を取っています。
少子高齢化が進み労働時間も減っている中、社会の変化に合うように会社の仕組みを変えることが、第一に目指すところです。例えば、チャックの製造に限らず、社内で行う仕事を自動化していくこと。そして自動化のノウハウを得ることができたら、それを何らかのかたちで商品化してお客様にご提供できないかと考えています。